土地の所有権放棄がついに法制化へ。ただし厳しい条件つき

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数年にわたり議論されてきた所有者不明土地を巡る問題ですが、最終的な法改正にようやくいたるようです。土地の所有権放棄がついに認められるようですが、一般市民にとっては大きな落とし穴があります。あまりにも条件厳しすぎてそう簡単には放棄できなくなっています。以下、詳しく解説します。

所有者が分からないまま放置されている土地の問題を解決するため、法制審議会は相続する際の登記の義務化や、不要な土地を手放して国の帰属とすることができる制度の創設などを盛り込んだ要綱を決定し、上川法務大臣に答申しました。

要綱では土地を相続する際の登記を義務化し、取得から3年以内に申請しなければ10万円以下の過料を科すとしたうえで、申請の負担を軽減するため、相続した人が申し出るだけで登記を認める新たな手続きを設けるとしています。 一方、建物や土壌汚染がないことなどを条件に、相続した不要な土地を手放して国の帰属とすることができる制度の創設も盛り込まれました。 法務省は今後、法案化の作業を進め、3月上旬にも国会に提出することにしています。

NHK:法制審 所有者不明土地対策で相続の際の登記義務化などを答申(2021年2月10日)

相続登記の義務化・罰則化

そもそも所有者不明土地がなぜ発生するかというと、所有者が死亡した後に相続人が自らの所有に切り替わったことを登記していないからです。一代ではまだしもこれが二代、三代と続くと相続人もねずみ算式に多くなって、結局誰の土地かわからなり、それが市街地に放置されたボロボロの空き家となり、社会問題化していたのでした。
今回の要綱( 民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案)では相続登記を義務化したうえで、さらに登記申請を行わない場合、10万円以下の過料を科すとしました。

相続登記には土地の評価額次第ですが司法書士への報酬も含めると10万円では通常ききません。
10万円以下の過料ですむのなら、、と考える人もいそうですが、それはここではふれず本題は所有権の放棄についてです。

土地の所有権放棄制度をついに新設

父親が何十年も前に原野商法で騙されて買ったあの山奥の土地、建物を建てるには何百万円の擁壁工事が必要と言われたあの土地、あれもついに放棄できるのか!と思いたいところですが、放棄するにあたってはかなり厳しい条件を付しています。

まずそもそもとして相続によって所有した土地でなければなりません。父親が騙された買った山奥の土地は父親が在命中は放棄できません。売買によって取得した土地は条件あいません。あくまでも相続の発生が条件です。相続であれば過去の相続でも適応されます。

放棄にあたっての厳し過ぎる条件

さらに、当該土地について非常に厳しい条件があります。主なものを以下列挙します。

  • 建物があったらダメ=通常の戸建で約150万円の解体費用がかかります。。。。
  • 特定有害物質により汚染されている土地はダメ=文言が曖昧なのですが、相続人が土壌汚染調査をして汚染されていないことを証明しないといけないのでしょうか?だとすると数百万円の負担となります。。。
  • 境界が不明なものはダメ=相続人が確定測量を前もって行わないといけません。通常の宅地でも60万円、山や山林となるともっとかかります。。。
  • 崖(いわやるがけ条例でいうがけです)がある土地のうち、その通常の管理に過分の費用が発生するものはダメ=擁壁等でがけ崩れ予防措置がない土地はアウトという意味かと。
  • 車両、工作物、樹木等有体物がある土地はダメ=これで山や山林は現実的にアウトです。山林の伐採には多大な費用がかかります。。。。道がない土地だってたくさんあります。

正確な法案となっていないため、やや曖昧なところもありますが、ざっと見ただけでもそう簡単には所有権を放棄できない条件となっています。

この要綱案が想定する放棄できる土地とは要するに市街地の確定測量済みの土地ということになります。
いや、そんな土地であれば放棄せずとも普通に売却できると思うのですが。。。

そもそものことの発端が都市部でのボロボロ空き家の放置問題をいかに解消するかというところから議論が出発しています(土地の所有権放棄を巡るこれまでの議論を参照)。
山奥のとんでもない土地を相続してしまい、売るに売れなくて困っている人を法的に救済しようという趣旨ではありませんでした。
国にしても個人なり法人なりが所有していればそれだけで固定資産税が入ってきますし、がけ崩れなどのリスクある土地をあえてもらいたくはないですよね。
そう考えると、大変残念ながら想定通りの内容だったかと思います。

国への帰納にはさらに別途費用が必要

相続した土地をなんとか整備して上記条件をすべて満たしたとしても、国はタダではそれを引き取りません。さらに、お金を払って引き取ってもらわないといけないのです。

まず、申請段階で調査費用を支払う必要があります。正確な金額はわかりませんが「実費」とのこと。山奥とかだと相当取られそうです。

調査終わって国への帰納が認められたら今度は「管理に要する10年分の標準的な費用の額」をまた納めないといけません。これはおそらく固定資産税10年分に相当する額のことだと思われます。

結論:所有権放棄は実質的にムリ

この要綱案は法制審議会が法務大事にすでに答申し、それに基づいて今国会での成立を目指すということなので、よっぽどのことがない限り法制化されるでしょう。
相続でへんな土地を相続してしまった人にとっては悪法そのものです。実質的に所有権放棄ができないことが法的に確定したということですから。

一番いいのは遺産分割協議の際に、この土地は相続する、あの土地は相続せず国に返納する、というように、相続対象の選択制を採用することです。
現行法ではすべて相続するか、すべて相続しないかのオール・オア・ナッシングになっているため、へんな土地とわかっていながら泣く泣く相続せざるを得なくなっています。そこの一番簡単な方法には手を入れなかったようですね。。。

国会で審議の後、正式に法案として成立したら、改めてご紹介したいと思います。

*国会で正式に法案が可決しましたので、改めて解説しています。
こちらをお読みください。
土地放棄の法制化の解説とまとめ

 

投稿者プロフィール

溝口 喜郎
溝口 喜郎代表取締役
やまねこ不動産株式会社の代表取締役です。
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