農地の地目変更登記と農業委員会

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すでに農地でないのに、農地法の規制により、地目が農地(田、畑)というだけで自由な売買に制限がかかります。そんな農地を売買するための知識や方法について解説します。

農地の地目変更登記と農地転用。これまったく別物なのですが、専門家(土地家屋調査士さん)でさえ勘違いされてある場合もあるので、まずはここから話をします。

地目変更登記とは

地目変更登記とは文字通り地目を変更することです。もともと地目が農地(「田」「畑」)として登記されていたのに、年月が経って草木が生い茂り荒れ放題。現況(現在の状態)の地目が登記簿の地目とは異なっています。そのため、登記簿の地目を現況の地目に合わせることが地目変更登記です。

農地転用とは

一方、農地転用とは農地を農地以外の別の目的で使うことです。畑をつぶして家を建てたり、駐車場にしたりします。地目変更登記とはまったく別の行為です。

農地にあれこれ規制がかかるのは農地法によります。農地保護の観点からの法律ですので、農地転用にあたっては農業委員会の許可(市街化区域の場合は届け出)が必須です。
これに対し、地目変更登記は農業委員会の許可や届け出は必要ありません。現況が農地でないならば地目は変更できます。ただ登記簿の地目を現況に合わせるだけだからです。すでに農地でないならば保護する必要はありません。

地目変更登記と農地転用はまったく別のものなのですが、役所や農業委員会の中にはこれを混同してるケースが多々あります。農業委員会の窓口にいって「農地転用の手続きは。。。」と言われたら、農地転用ではなく、地目変更登記だとはっきり伝えてください。

地目変更登記に農業委員会が関わる理由

では農地でないならば勝手に地目変更登記できるのか、というとそうではありません。「農地でないならば」を判断するのは農業委員会だからです。

したがって、農地(地目が農地)の地目変更登記をしようと思えば、農業委員会から「非農地証明書」というのをもらう必要があります。農業委員会に申請すれば、農業委員会が現地を確認して農地かどうかを判断します。農業委員会が農地でないと判断すれば非農地証明書がもらえます。非農地証明書と共に法務局で地目変更登記を申請すれば、これで地目変更登記が完了します。

立ちはだかる農業委員会の怠慢

話がややこしくなるのはここからです。農業委員会の「非農地証明書」の交付はあくまでも行政サービスの一環とされています。農業委員会の義務ではありません。多くの農業委員会がこのサービスを行っていますが、この業務を行っていない農業委員会もあるのです。例えば私の知る限り、埼玉県のすべての農業委員会は2022年7月時点でこのサービスを一切行っていませんでした。

少し話が脱線しますが、農業委員会を管轄する農水省は各農業委員会に非農地判断業務をすみやかに行えと指示をだしています。地目が農地というだけで自由な売買が行えず、土地再利用の大きな制限となっていることに農水省も気づいているからです。

「非農地判断の徹底について 」(令和3年4月1日付2経営第3505号農林水産省経営局農地政策課長通知)

当社はこの文書をもとにさいたま市農業委員会と交渉しましたが、それでもさいたま市農業委員会は頑なに拒否しました(理由は義務ではないこと、前例がない、とのこと。。。。。)。

農水省にさいたま市農業委員会の対応について相談しました。農水省は農業委員会を管轄しており上述の通知等で指導はしていますが命令はできないため、このような行政がまだ残っているそうです。こうなると農地の地目変更登記に必要な非農地証明書がもらえない場合もでてきます。

非農地証明書もらえない時は法務局に直接

当社の感覚では全国の3割くらいの行政が未だに非農地証明書の申請受付業務を行っていません。この場合の対処方法も実はあります。

それが法務局に直接地目変更登記申請を出すことです。非農地証明書は地目変更登記申請にあたっての必須の要件ではないからです。したがって法務局はこの地目変更登記の申請を受付けてくれます。
その後の流れはこうなります。

1、地目変更登記の申請を受けた法務局は、当該地が農地に該当するかどうかを農業委員会に照会する

2、農業委員会は30日以内に法務局に対して農地非農地の判断を伝える(実際には、農業委員会は月1で会議を行うため実務上は2ヶ月になることもあります)

3、農業委員会が非農地と判断するか、あるいは農業委員会から30日以内(or2ヶ月以内)に農地非農地の回答がない場合、法務局は地目変更登記を認める

このようになっています。つまり、非農地証明書の発行は2の手続きを省くための措置なのです。どっちみち農業委員会は農地非農地の判断をくださないといけません。
(なのでさいたま市農業委員会のやってることは意味不明なのです。結局この方法で地目変更登記ができました)

当該地の農業委員会が非農地証明書など知らんと言ってきたら、この方法を使ってください。

農業委員会の非農地判断基準

以上、書いてきたことは本当に農地でない場合です。普通の田んぼとか畑とかは地目変更登記が当然できません。あくまでも現況に登記簿地目を合わせることが地目変更登記だからです。

農業委員会がどのように農地非農地を判断するかは明確なルールがありません。耕作地として再生不能というのが建前ですが、農業委員会が個別に判断します。一般的には耕作をやめて何十年とかかなり太めの木が覆い茂ってるとかです。

農業振興地域は難しい?!

ただし、農業振興地域に指定されている土地は判断が非常に厳しくなります。読んで字の如く農業を振興させるための地域だからです。いくら荒れ果てた土地でも地目変更のハードルは極端にあがります。

いずれにしても、まずは当地の農業委員会に相談してみましょう(窓口はその土地がある役所の農業委員会です。お住まいの役所ではありません)。場合によってはすでに農業委員会の農地簿から外れてるケースもあります。
また、上述のように、国の方針はまったく使われてない土地を意味もなく保護することよりも、土地売買の活性化、再利用に傾いています。

実際の手続きは土地家屋調査士さんに

以上、農地の地目変更登記について解説しました。
おおまかな流れはご理解いただけたかと思いますが、これを実際に個人で手続きするのは一苦労です(私も実際には手続きを行ったことはありません)。当該土地とお住まいが近いならまだしも、他県となると実質不可能だと思います。

地目変更登記申請にあたっては土地家屋調査士さんにお願いされることをおすすめします。というのも多くの土地がまず場所がわからなかったり、山の中にあったりするからです。土地家屋調査士さんは測量の専門家のため場所の特定や現地調査も行ってくれます。

土地家屋調査士さんに全部依頼した場合の金額の目安等については、こちらで解説しています。
あわせてご参照ください。

非農地証明書取得の方法・相場金額

投稿者プロフィール

溝口 喜郎
溝口 喜郎代表取締役
やまねこ不動産株式会社の代表取締役です。
当社では、処分に困る不動産の所有権を有料でお引取りするサービスをご提供しています。
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